● 1930年 ワゴンリ・クック・CPL 大西洋横断のポスター 精密レプリカ額入りジクレーアート
≪CANADA AND U.S.A. BY CANADIAN PACIFIC, Wagon Lits - Cook≫
額縁・マットの色をプルダウンにてお選びください
送料無料。お届けはご注文後約7日です。価格にはアートプリントとマット・額縁、全て含まれます
作者名 :anonymous
製作年 :1930
額縁・マット : 木製カマボコ型=12mm、t=1.5mmx2枚ダブルマット、前面1.8mm厚UVカットアクリル(クラレ・コモグラス)
額縁とマット色をお選びいただけます
・黒艶消し額縁 X ブラウン/ライトベージュ・ダブルマット
・白ツヤ額縁 X ネイビー/ライトブルー・ダブルマット
額縁サイズ : 410mm x 525mm
作品サイズ : 272mm x 407mm (内側マット抜きサイズ、表側オーバーマット抜きは282 x 417mm)
当商品は伊勢和紙に顔料インクを用いたアートプリントを国産材料で額装したものです。奥行きを持たせる濃淡色二重のダブルマット仕様です。伊勢和紙は伊勢神宮の奉書紙として漉かれ全国の神宮大麻に使用されています。インクジェットに意欲的で、伊勢和紙アート紙は新たな表現材料として世界中のアーティストに使用されています。マーメード紙程度の表面テクスチャーによる風合いが楽しめ、無酸性紙に顔料の組合せはリトグラフやシルクスクリーンに比べ格段の保存性を持ち、数十年単位の鑑賞に耐えます。画像データに傷や劣化の補修、彩度などの可塑修正を施し、テストプリントを繰り返し微調整して仕上げています
● 1930年 ワゴンリ・クック・CPL 大西洋横のポスター
CPL・カナディアンパシフィックのエンプレス・オブ・ブリテンが描かれたポスターです。チケット代理店として後刷りで入れられた、ワゴン・リ社とトーマス・クックの連名が大変に珍しいものです。
英国にとってインドや香港との貿易とその交通路は重要で、伝統のP&O東回りルートに対して、西回りルートの確立は「オールレッドルート」の完成を意味し、カナディアンパシフィックへの期待は否が応にも高まりました。(赤は英国、すなわち大英帝国の領土・植民地のみを通り世界を一周できることを意味する) 1891年、CPLが太平洋航路を開設、1903年には大西洋航路に乗り出し、カナディアンパシフィックの船と列車を乗り継ぎ、一気通貫36日で香港まで行けるようになりました。暑いインド洋経由東回りルートに対し、涼しいカナダ経由西回りルートは人気を博しました。1920年代後半、CPLは西回りルートの競争力を高めるために、大西洋と太平洋に大型客船の同時投入を決断、1931年、サウサンプトン・ケベック線に42000トン、24ノットのエンプレス・オブ・ブリテンを就役させました。CPLがこの新船に寄せる期待は並々ならぬもので、本作を含め多数のポスターが制作されて使用されました。さて、ベースとなったのはそのエンプレス・オブ・ブリテンのポスターですが、本作の注目すべき点は、後刷りで入れられた赤文字の「Wagon Lits // Cook」の表記です。
1841年にパプテスト教会信者の巡礼旅行を成功させたトーマス・クックによって1872年、世界初の旅行代理店として発足したのがトーマス・クック・アンド・サンでした。世界中の鉄道会社や船会社のチケット販売代理権を得て、ホテルやレストラン、観光施設・観光地のネットワークを構築しクーポン、さらにはトラベラーズチェックも発行、近代旅行代理店の機能の多くはトーマス・クックが作り上げたものでした。創業者であるトーマス・クック引退後は息子のジョン・メイソン・クック、その後もトマース・クックの3人の孫によって会社は発展するものの、一説によればファミリービジネスの限界を悟ったとも言われ、会社をワゴン・リ社に売却しました。
ワゴン・リ社はオリエント急行を運行した国際寝台列車会社です。1865年、米国で鉄道会社の鉄路に自前の豪華寝台列車を走らせる業務形態のプルマン社が設立されました。豪華客車を自社製造し、これに自社のクルー(ポーター、給仕人、調理人、客室係など)を乗せて、従来の鉄道列車になかったサービスを付加、機関車と鉄路は鉄道会社のものを利用して自前の列車を編成するという画期的な鉄道事業でした。1868年にプルマン列車に乗ったベルギーのジョルジュ・ナゲルマケールスはこれに感銘を受けて欧州での創業を決断、WAGON-LITZ(国際寝台車会社=ワゴン・リ)を設立してパリ・イスタンブール間のオリエント急行運行を開始しました。産業革命以降、欧州各国で無軌道に設立・敷設された鉄道が、国家主導によって統合に向かう過程で、ワゴン・リ社の提供するサービスは、例えるならば目的地行きのバスにさえ乗れば、一般道、高速道路、有料道路、都市高速の乗り継ぎに関わりなく乗ったまま到着できるようなもので、ダイヤとサービスがコミットされたワゴン・リ社の列車、特に国境をまたぐ列車旅行では支持が高く、最盛期の1930年代には2268台もの車両を保有しました。ワゴン・リ社によるトーマス・クックの吸収は、このワゴン・リ社の最盛期に起きたことでした。
ワゴン・リ社がトーマス・クックを買収したのは1928年のことですが、実際に会社の業務統合が完成したのは1933年頃と思われます。1933年には、アールデコポスターの巨匠カッサンドルが「WAGON LITS COOK」のポスター描いています。WAGON LITS COOK体制は1970年頃まで継続されますが、少なくとも目に触れる形では1933年以降「WAGON LITS COOK」と表記されています。本作は「Wagon Lits // Cook」と、ワゴン・リ社とクックの間にダブルスラッシュが入れられており、このような表記は後にも先にも本作以外に見ることができません。つまり1928年にワゴン・リ社がトーマス・クックを買収し、1933年頃までに業務統合が完成を見るまでの間の過渡期を示す貴重な痕跡です。1933年のカッサンドルのポスター以降は戦後も「WAGON LITS COOK」名義のポスターや「COOK」名義のポスターは多数制作されますが、本作のように後刷り間借り状態のようなポスターは見当たらないことからも過渡期であることが重ねて推察されるところです。交通発達史の興味深い史料といえます
・ 雑感
現代アメリカの若者は大多数があのSONYをして映画会社であると認識しているそうです。この世代はSONYがトランジスタラジオやトリニトロンテレビ、ウォークマンを作っていた会社であることを知らないそうです。あるひとつの会社が、企業買収を経て大きくその生業を変質させてゆくことは珍しいことではありません。オリエントエクスプレスとトーマス・クックが一つの会社だった時期がある・・・戦後、世界中で鉄道会社の整理統合が完成してゆくと、相対的に国際列車の地位は低下しました。鉄道会社各社がサービスのノウハウを育み、また鉄道会社同士が直接的に提携関係を構築したからです。WAGON LITS COOKは、実質どのようなポジションを得ていたものか?そのような興味は、たった一枚のポスターからインスパイルされるものです (T.O.)
【Maritime Gallery Ocean-Note】
● ジクレーアートプリント・客船 LL/Poster Ocean Liner INDEX
※ポスター画像をクリックしていただくと詳細ページへ移動します
納入事例
客船ポスター四方海話
船と港のエッセイ 1
船と港のエッセイ 2
【Maritime Gallery Ocean-Note】