● 1936年 スフィア紙・客船クイーンメリー レプリカ 額入りジクレーアート
≪The "Queen Mary's" Streamlined Bridges, The SPHERE≫
額縁・マットの色をプルダウンにてお選びください
送料無料。お届けはご注文後約7日です。価格にはアートプリントとマット・額縁、全て含まれます
作者名 :anonymous
製作年 :1936
額縁・マット : 木製カマボコ型=12mm、t=1.5mmx2枚ダブルマット、前面1.8mm厚UVカットアクリル(クラレ・コモグラス)
額縁とマット色をお選びいただけます
・黒艶消し額縁 X ブラウン/ライトベージュ・ダブルマット
・白ツヤ額縁 X ネイビー/ライトブルー・ダブルマット
額縁サイズ : 410mm x 525mm
作品サイズ : 272mm x 407mm (内側マット抜きサイズ、表側オーバーマット抜きは282 x 417mm)
当商品は伊勢和紙に顔料インクを用いたアートプリントを国産材料で額装したものです。奥行きを持たせる濃淡色二重のダブルマット仕様です。伊勢和紙は伊勢神宮の奉書紙として漉かれ全国の神宮大麻に使用されています。インクジェットに意欲的で、伊勢和紙アート紙は新たな表現材料として世界中のアーティストに使用されています。マーメード紙程度の表面テクスチャーによる風合いが楽しめ、無酸性紙に顔料の組合せはリトグラフやシルクスクリーンに比べ格段の保存性を持ち、数十年単位の鑑賞に耐えます。画像データに傷や劣化の補修、彩度などの可塑修正を施し、テストプリントを繰り返し微調整して仕上げています
● 1936年 スフィア紙・客船クイーンメリー
有名な話ながら・・・ジョンブラウン造船所534番船の船名につきキュナードは「Queen Victoria」を予定していました。キュナードの船名が「...ia」で終わる伝統に叶っており、何より最大で地球上の陸地の22%を領有した大英帝国の空前の繁栄=パクスブリタニカはビクトリア女王の治世下で確立されたことからすれば、世界最大の客船として就役する534番船に相応しいと考えたのは当然でした。ところが・・・キュナードとホワイトスターの合併を条件に英政府は無利子の融資を実行、世界恐慌の影響で2年以上中断してしていた534番船の建造が再開されて1934年の9月には命名進水を迎えますが、これに先立ちジョンブラウン造船所は国王ジョージ5世の訪問を受けます。国を挙げての建造となった534番船の建造現場を訪れた形ですが、この際に船名についての下問を受けたキュナードの役員は「この国の最も偉大な女王の名を戴きます」と「Queen Victoria」のつもりで答えたところ、ジョージ5世は祖母女王のこととは考えず「それは妻も喜ぶでしょう」と勘違いをされます。ジョージ5世の妻こそは「Queen Mary」・・・国王に恥をかかせるわけにはゆかないと、534番船の船名はあっさりと「Queen Mary」に変更されました。命名と進水は無事に終わったものの艤装を終えて就役を迎える1936年、1月20日にジョージ5世が崩御、息子のエドワード8世が王位に就きます。エドワード8世は1936年3月5日、就役直前のクイーンメリーをジョンブラウン造船所に訪問、マストにこそ登らなかったもののハウス最高部のコンパスブリッジから最下層の機関室までをくまなく見て回り、船内を歩いた距離は8マイル半にも及んだと伝わります。(この時の様子は当時のニュースフィルムに残されており、現在でもインターネット上で見ることができます。しかし・・・まさかこの9ヶ月後に王冠を捨てて、自分がこのクイーンメリーの三等船客の一人となって英国から去るとはエドワード8世自身も誰も想像がつかなかったことでしょう)
「The SPHERE - スフィア」は、1900年から1964年まで発行されていたタブロイド判の週刊新聞で、国立大英図書館には全号がアーカイブ保存されています。発行はロンドンイラストレーテッド新聞社で、20世紀前半の英国では写真やイラストなどのヴィジュアルをフューチャーしたタブロイド紙が数紙発行されて激しい競争を繰り広げていました。(このような形式が米国に渡るとLIFEなどの雑誌に成り代わってゆくことになります) 1936年3月7日号のスフィアは、ご覧の通り就役近い客船クイーンメリーのブリッジを大きく写した写真が紙面を飾りました。下部のキャプションにはエドワード8世がクイーンメリーを訪問したことが記されており、その僅か2日後に、速報よろしく本紙が発行されたことになります。ただし、エドワード8世の訪問時の写真が使用されているわけではなく、1936年当時の紙メディアの速報性がどれだけであったかは判りませんが、写真と記事は予め王の予定に基づいて用意されたものと想像されます。
1930年代の造形の特徴のひとつに「Streamline=流線形」があります。機関車や自動車など、技術の発達によって速度の向上が著しかった車両において空気抵抗を減らす目的で曲線で構成された造形が多用されるようになりました。水に浮かぶ万トン単位の客船に「流線形」の物理的な有用性がどれほどあったかは疑問(ゼロではないにせよ時速にして50km/h台の船に空気抵抗の有無は余り重要ではなかった筈です。但し、水と接する水線下の船体ラインズは流体力学上、空気抵抗よりも余程重要でした)ですが、外観でスピード感を感じさせる流線形は時代が求めた造形だったといえます。本紙の客船クイーンメリーのブリッジの写真は、下に「The "Queen Mary's" Streamlined Bridges」と見出しが付けられ、「偉大なる船の注目すべき点」とサブタイトルが付けられています。前年に就役したライバル、フランスの客船ノルマンディーは水線下の絞り込んだ船首が急激に上部と後方に向かって太って行く形状を持ち、船首部はフレア型と呼ばれる花弁が拡がるような美しい曲線で構成され、貫通デッキに至ると優雅なファッションプレートの曲線がブリッジまで連なり、これも曲面で構成されたブリッジからハウスへと繋がってゆきます。このノルマンディーの造形が流線形を強く感じさせたため、一般に「優雅で流麗、革新的なノルマンディーに対し、威厳と伝統を感じさせる保守的なクイーンメリー」と評されることが殆どですが、クイーンメリーが保守的だったというのは、この写真を見てお判りのとおり全くの的外れな論評です。上層に登るにつれて小さくなってゆくブリッジの造形は、クイーンメリーのデザインの下敷きとなったとされる客船アキタニアの直立ブリッジとは全く違う造形で、この「流線形のブリッジ」のタイトルは理に叶った寸評です。右の本文には、前述の通りエドワード8世の訪問を受けたことから書き出され、大西洋横断の速度記録が期待できることや、内装工事に当代一流の芸術家が起用されたこと、写真で良くわかるウィングブリッジの有用性などが述べられ、処女航海のサウザンプトン出帆が5月27日である予告も記されています。大英帝国の客船クイーンメリーに寄せる大きな期待感と耳目集める国家的話題性が存分に感じられる紙面です
・ 雑感
文字による情報の重要性は言うまでもないことながら、ヴィジュアルが伝える情報の直感的な説得力は時代を動かすほどの力を持っていました。百万言の賛辞よりも、このクイーンメリーの完成された造形美をリアルに伝える写真は、大衆に人類の英知のひとつの到達点を強く感じさせたものと思います (T.O.)
【Maritime Gallery Ocean-Note】
● ジクレーアートプリント・客船 LL/Poster Ocean Liner INDEX
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納入事例
客船ポスター四方海話
船と港のエッセイ 1
船と港のエッセイ 2
【Maritime Gallery Ocean-Note】