● 1937年 イタリアンライン・客船レックス見開き雑誌広告レプリカ 額入りジクレーアート
≪SUN'S-EYE VIEW≫
額縁・マットの色をプルダウンにてお選びください
送料無料。お届けはご注文後約7日です。価格にはアートプリントとマット・額縁、全て含まれます
作者名 :anonymous
製作年 :1937
額縁・マット : 木製カマボコ型=12mm、t=1.5mmx2枚ダブルマット、前面1.8mm厚UVカットアクリル(クラレ・コモグラス)
額縁とマット色をお選びいただけます
・黒艶消し額縁 X ブラウン/ライトベージュ・ダブルマット
・白ツヤ額縁 X ネイビー/ライトブルー・ダブルマット
額縁サイズ : 525mm x 410mm
作品サイズ : 407mm x 272mm (内側マット抜きサイズ、表側オーバーマット抜きは417 x 282mm)
当商品は伊勢和紙に顔料インクを用いたアートプリントを国産材料で額装したものです。奥行きを持たせる濃淡色二重のダブルマット仕様です。伊勢和紙は伊勢神宮の奉書紙として漉かれ全国の神宮大麻に使用されています。インクジェットに意欲的で、伊勢和紙アート紙は新たな表現材料として世界中のアーティストに使用されています。マーメード紙程度の表面テクスチャーによる風合いが楽しめ、無酸性紙に顔料の組合せはリトグラフやシルクスクリーンに比べ格段の保存性を持ち、数十年単位の鑑賞に耐えます。画像データに傷や劣化の補修、彩度などの可塑修正を施し、テストプリントを繰り返し微調整して仕上げています
● 1937年 イタリアンライン・客船レックス見開き雑誌広告
本作見開き広告、描かれているのは客船レックスのデッキです。ニューヨークから見て航海後半の航路も違っており、速度競争とは無縁の方針を採ったイタリアンラインが、広告でアピールしたのは暖かさです。大きく描いたレックスのデッキは「リドデッキ」、ヴェネツィアのリゾート地リド島にちなんで名づけられたアッパーデッキで、プールを備えたサンデッキを示す「リドデッキ」は船の一般名詞になっています。コピー本文には丁寧に、冬のニューヨークと地中海航路のデッキ上の気温が説明されています。華氏表記ですが、概ねニューヨークが氷点下でも地中海では15度から20度ほど、ニューヨーク6月頃の気温である、と。加えて、ニース、ジェノア、トリエステに寄港するので、欧州行き旅行には便利・・・これは事実であり、5日で着く必要さえなければパリに行くのにイタリアンラインを使うというのは観光目的の米国人には好評で、片道は地中海、片道は英仏海峡発着という手もありました。
1930年、ナビゲツィオーネ・ジェネラリ・イタリアーナ(NGI、1932年イタリアンラインへ統合)は、ドイツの客船ブレーメンを抜いて世界最大となる客船レックスの建造を開始しました。国家統一が不完全で第一次大戦の戦勝国に連なりながら国力を発揮できないイタリアに、ムッソリーニは社会主義闘争を一歩すすめた階級宥和ファシズム思想を唱えて政治的頭角を現します。ファシズムとはイタリア語で「束ねる」の意、全体主義をもって真の国力を発揮するという国家思想です。ムッソリーニが首相の座につき、イタリアがファシズム体制に身をゆだねるのは1922年、国民は経済発展のために良い意味での強力な独裁政治を支持します。ヒトラーに同調したのは破滅的失敗でしたが、その経済政策は国際金融資本が後押しするほど的確なもので、英国がケインズを否定して均衡財政緊縮予算を組んだ時期に、積極的な公共投資と財政支出でイタリアに急速な経済成長をもたらします。(後に完全雇用を実現したヒトラーの経済政策はムッソリーニに倣ったものでした) この経済政策の一環で、ドイツのスーパーライナーに範をとり建造されたのがNGIの客船レックスとロイドサバウドの客船コンテ・ディ・サヴォアです。1929年の恐慌で一時的後退を余儀なくされた経済成長の維持と国威発揚を、この二隻の客船の活躍に託す形になりました。イタリアンラインは、ムッソリーニの企業国営化戦略によってジェノバのNGI、トリノのロイドサバウド、トリエステのコスリッシュの3船社が合併して1932年に設立されます。他国に見劣る船社をそのまま維持するよりも、「束ねる」に従って、国営フラッグキャリアーに集約した方が競争力を発揮できると考えたもので、建造中だった二隻のスーパーライナーはイタリアンラインの客船として就役します。
客船レックスは1932年8月に完成、公試運転で7時間にわたり28.9ノットの記録を叩き出して関係者を狂喜させる一方、9月のニューヨークへの処女航海では早々に蒸気タービンが故障、その後も絶え間なくの初期トラブルに見舞われました。しかし翌1933年、レックスは地中海出口のジブラルタルからニューヨーク・アンプローズ灯台船間を公試運転を上回る28.92ノットで駆け抜け大西洋横断最速記録を更新、イタリアに最初で最後となる大西洋横断客船最速記録・ブルーリボンをもたらしました。客船コンテ・ディ・サヴォアはレックスに遅れること3か月の11月に完成、公試運転ではレックスよりも速い29.95ノットの最高速度を記録、スペリー社製の巨大なジャイロスタビライザーを積んだ揺れない船として大きな期待を背負っての就役でしたが、ひとつ175トンものジャイロ(巨大な独楽)を船内に3つも積んでいた所為か否か、とうとうレックスの速度記録を上回ることはありませんでした。そもそも2隻のスーパーライナーで整ったスケジュールを守る・・・といった発想はイタリア人にはなく、緩めのスケジュールで穏やかで楽しい地中海航を提供することに終始したようです。従って、レックスのブリーリボン獲得で国威発揚の使命を果たして以降、両船は速度記録に挑戦するような航海は行ないませんでしたが、地中海を行くイタリアンラインの船は常に上々の人気を博していました
・ 雑感
「レックス」も「コンテ・ディ・サヴォア」もイタリア王家への崇敬を表す船名でした。戦後になっても王党派なる政治勢力があった(イタリアの王政廃止は1946年)ことからわかるように、イタリアという国の歴史的経緯と国民性の中にあって、果たしてムッソリーニのファシズムが一方で王家を温存するという矛盾を解決していたかどうかは疑問です。いずれにせよ、名誉革命とナポレオンの民主主義には程遠く、人類が永年かかってもたどり着けない理想の国家は幻で、ムッソリーニは晩年にはその崇敬する王家からさえも疎んじられることになります。但し、ドイツ客船がヒトラー政権以降、一部の米国人から乗船を敬遠されたのとは対照的に、イタリアンラインの客船は元々の需要が限定的ながら、終始大変に好まれていました (T.O.)
【Maritime Gallery Ocean-Note】
● ジクレーアートプリント・客船 LL/Poster Ocean Liner INDEX
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納入事例
客船ポスター四方海話
船と港のエッセイ 1
船と港のエッセイ 2
【Maritime Gallery Ocean-Note】