26. 天皇陛下訪英 昔はAPLで
天皇陛下がエリザベス女王の即位60周年の祝賀に参加されるために訪英しておられる。1953年(昭和28年)の載冠式の時も御訪英された由、思い入れもおありとのこと。心臓の手術からそう時間も経ってないながら強いご希望がおありだったとか・・・御無理をなさらぬように慮るのは僕だけではなかろう。載冠式の時の御訪英、僕は昭和37年の生まれなので60年前のことを知る由もないが、4月に鹿島立ちして御帰朝は10月、帰朝の折にはまだ今ほど多種発行されることもなかった鳳凰と鶴、2種類の記念切手が発行されたほどだから、当時の日本にあっては大きなニュースだったのだろうと思う。
その約60年前の訪英の時、明仁皇太子殿下(今上天皇)が乗船されたのはアメリカンプレジデントラインズ(APL)の客船プレジデントウィルソンだった。一応、第二次大戦を生き延びた氷川丸も不定期ながらシアトル太平洋航路を再開していたようだったが(正確にはこの年の秋頃、氷川丸が太平洋航路復帰したものの占領下にあっては日の丸の船尾掲揚が許されず、米国港入港の際には入港を拒否されそうになったところ - 航海法で外国港入港の際には国旗を掲なければならない - たまたま乗船していた国連大使が国連旗を貸してくれて、こいつを掲げて入港して拍手喝采を浴びたのだとか・・・以後日の丸使用か許されるまで国連旗を使用したとか・・・「してやったり」の美談である)、経緯はちょっとその辺の書籍をひっくり返しただけでは調べがつかないものの、病院船、引き揚げ船で酷使された氷川丸よりは、APLの船の方が船足も速かったし、揺れの問題(まだ4月のことだから、APLのハワイ経由の航路の方がシアトル大圏航路よりは穏やかな筈)や、警備など安全のことも含めてウィルソンでの太平洋横断に落ち着いたのだと推測される。
それにしても、60年・・・APLの船で出かけたのも今は昔、そろそろ買い替えが検討されているそうだが、今は立派な政府専用機・・・陛下におかれても隔世の感をお感じなのではなかろうか・・・(2012,5,17初稿、2015年加筆)